今回見た時は初めて冒頭の現代サクの語りから涙でした。
生きているものへの思いは死者に勝っていくという、その残酷な事実に返せる言葉が僕にはもう無い。
亜紀の死と過ごした17年が終わっていく気がした。
きっと流れる血は、いつしか君の記憶さえ彼方へと運ぶだろう。
僕はあと何度、君の名を呼ぶんだろう
あと何度、あんな朝を迎えることができるんだろう
与えられた未来と失われる過去の狭間で君の名を呼ぶ
・・・亜紀
涙を流して朝を迎え、ありえない現実に期待する日々がつらくなり、「もう、無理だと思ったんです。」と言っていたサクが、もう亜紀の事を忘れてしまうかもしれないと思う。忘れられないこともつらかったけど、忘れていくこともつらいことなんですね。同じ思いを共有してきただろう亜紀パパでなければ、サクを解放してあげることはできなかったんだろうなあ、としみじみ思いました。
サクちゃんが亜紀の最期に一緒にいられなかったこと、亜紀が骨になってしまう前に一度も会いに行かなかったこと、これはその後の17年に影響を与えたのではないかな。お葬式というのはつらいけど、亡くなった人にさようならする大切な儀式なんだと思うようになりました。最後に亜紀ちゃんのあの穏やかな死に顔を見ていたら、ひょっとしたら骨を持ち続けることは無かったのかも。もう、ドラマなんだからそんなこと考えてもしょうがないのに、いろいろと思いがめぐります。
抜け殻のようなサクちゃんを立ち直らせようとする幼なじみ三人組、スケちゃんの「いてえだろ、腹へんだろ、くそすんだろ」の辺りからはまたまた号泣ですが、とどめはやはりサク父。あの温厚そうな、サク母にやられっぱなしのサク父が偉大な父になった瞬間。涙が止まりません。
「何をいまさら傷ついたフリしてんだ。お前がとどめを刺したようなもんじゃないか。分かってたんだろ、ああ、もう死ぬわって。分かってて連れ出したんだろ。やりたい放題やって、自分が一番かわいそうか。悲劇のヒーローは大威張りだな。」
「誰も俺の気持ちなんか」
「ほら、亜紀さんのためじゃなくて、自分のために泣いてるだけじゃないか」
取っ組み合いになる二人。胸ぐらつかまれて庭に放り出されるサクちゃん。サク父は大きいんです。このシーンすごい迫力。
「どうして死んだ者の頼み一つ聞いてやることもできない。
どうして送ってやること一つできない。
なさけない・・・」
とうとうウルルへ。アボリジニの世界では生と死は一体。死んだら全てが土に還り、また新しい命を育てる。死んでもサクちゃんと皆とずっと一緒にいられる場所に行きたい。だからこそ亜紀はウルルに行きたかったのではないか、ウルルに骨を撒いてほしかったのではないか、と今回改めて見て思いました。
一話冒頭と同じ「亜紀ー!」のシーンを最終話で見せる。でも、けっして同じではないです。素晴らしい演技。素晴らしい演出。素晴らしい言葉。特に最後の一言が効きますね。恐ろしいほど泣けてくるけど、大好きなシーンです。
なぜだか世界が色を失っていた。
あんなに青かった空も、赤かった土も、
そんな世界の中で、きっと骨だけは白く、変わらない真実だった。
温度も無い、重さも無い、吹けば飛ぶような白い粉。
それが亜紀だった。
「亜紀ー!」
僕の好きな人だった。
亜紀が死んでからずっと、亜紀が死んだことを忘れないようにあの骨のビンを持っていたサクちゃん。でも視聴者の中でビンを持っていたのはずっと緒方サクでした。それがオーストラリアから帰って、自分の部屋で同じように小瓶をサクちゃんが手にしている。ドキッとしましたね。
そしてさらにドキッとしたのが定位置での谷田部先生とサクの会話。
「ちゃんと、送ってあげられた?廣瀬。」
「これが亜紀なんだって思うと、やっぱりできなくて。
でもずっと持ってようかなって。」
「忘れないように?廣瀬といたことを」
「亜紀が、死んだことを」
あああああ、そうだったんだ。だからずっとビンを持っていたの。だから全部の思い出の品、ウォークマン、カセット、写真をしまいこんだの?サクちゃん、つらすぎるよ。でもお医者さんになることを決意したんです。
そしてサクちゃんの17年間が始まる。第一話のサクと同じように起きたら泣いていて、同じセリフを言う。肩をトントンされて、亜紀じゃないか、とありえない現実に期待してがっくりする。
朝起きると泣いている。
悲しいからではない。
夢から現実へと戻ってくる時、
またぎこさなくてはならない亀裂があり、
僕は涙を流さずにそこを超えることはできない。
何度も確かめて、それでもなお、ありえない現実に期待する。
そんなことあるはずもないのに。。
2004年に戻って「それが僕の17年だった。」
これでなんか全て納得させられます。第一話の時点では違和感がありすぎる緒方サクと山田君のサクちゃんがつながったのです。
今回見て一番泣いた緒方サクと明希のシーン。やっぱり何かを失うことは、何かを得ることだったのだと、亜紀が言ってた通りだったよね。それを一樹の父親の事でちゃんとわかっていて、だからサクの背中を押してあげる明希。亜紀の存在がサクの中でずっと生き続けることもわかっている、それを許していける明希。「そんな恋は二度と、ないよ」と言えるなんて、サクの事本当に好きでいてくれてるんだなあ、強い女性だなあって感謝したくなりました。
「変な、言い方だけど、彼がいないことが私を育ててくれたっていうか。
亜紀さんの骨が、松本君にがんばれって言ってくれたんじゃないの?
松本君はそれに応え続けてきたんじゃないの?
すごいことだと思う。
そんな恋はきっと二度と、ないよ。
かけがえのない17年をこんな形で終わりにしてもいいの?」
そしてサクと亜紀パパの再会。かなり山田君の作り上げたサクちゃんを意識して演じてくれた緒方さん、ありがとうございます。お約束の亜紀パパのサクちゃんいじめ、健在で嬉しかった。
「まだ生きてたのか」
「あ、あの、すみません。
あの、亜紀に、亜紀さんに謝らせてください。」
「昔も言ったと思うが、人に会ったら挨拶しなさい」
もう、語りつくされている亜紀パパとサクの海辺のシーン。やっぱり亜紀パパはずっとずっとサクが自分から来てくれるのを信じて待っていたのだと思います。BBSでなぜオーストラリアで渡さなかったのか、偽善者廣瀬真とか議論もありましたけど、サクちゃんが骨を撒けなかった事を知っていたと思うから、まだ渡す時ではないと判断したんでしょうね。ずっとサクの事を気にかけてくれてたんだと思います。
「寂しいんだろう。俺もそうだ。
見たくもないことまで夢に見ていたのに、見なくなってね。
最近では思い出すのにも時間がかかるようになって。
あの時はどうだったか、なんて女房に確かめるようになって。
でも、忘れたいのでも、忘れないのでもなくてね、
人間は忘れていくんだよ。生きていくために。
まあ、そんなことはお医者様に説教してもな。
よくがんばったなあ、サク。
人の生死を扱う仕事はつらかっただろう。。
もう、充分だ。ありがとう。」
「ソラノウタ」
生きていくあなたへ
もしも、おまえが
枯れ葉って何の役に立つのって
きいたなら、
私は答えるだろう
病んだ土を肥やすんだと。
おまえは聞く
冬はなぜ必要なの?
すると私は答えるだろう
新しい葉を生み出すためさ
おまえは聞く
葉っぱはなんであんなに緑なの?
そこで私は答える
なぜって、やつらは命の力に
あふれているからだ
おまえはまた聞く
夏が終わらなきゃ
いけないわけは?
わたしは答える
葉っぱどもが
みんな死んで行ける
ようにさ
おまえは最期に聞く
隣のあの子はどこに行ったの?
すると私は答えるだろう
もう見えないよ
なぜなら、おまえの中に
いるからさ
おまえの脚は、あの子の脚だ
がんばれ亜紀はテープではなく、絵本をサクちゃんに遺していた。亜紀らしさのつまった贈りもの。これが「廣瀬亜紀」です。
ここからラストへの流れは圧巻です。どこで骨を撒くのか、ウルルだろうと思い込んでいた私ですが、あのグランドでよ〜い、ドン!走りながら、骨と一緒に走る。これ以上の、これ以外の場所で撒き方なんてありえない、そう思わせてくれた納得のエンディングでした。そしてあのナレーションは一生覚えていると思います。
追いつけない速度で去っていく亜紀を、僕はもうつかまえる事ができない。
生きている限り、君と僕とは遠くなるばかりだろう。
だけど僕は走ることをやめない。
走り続ける僕達のの足跡は、君がいた証だから
「がんばれ、サクちゃん。ピー」
走り終わったその時に、
君に笑って会えるだろう。
最後の最後まで丁寧なこのドラマ、最高です。
「かたちあるもの」が流れる中、亜紀が遺した最後のメッセージをしっかり受け取って、周りの人々それぞれが亜紀と共に生きている。
智世が大きな声で「ベントウ忘れてるよ、あき!」
ボウズがお坊さんになって、たこ焼きパパさんで「たくはち〜」
スケちゃんが「何してもいいけどよ〜、お前さん、好きな女と夢島には行っちゃいけねえよ」
谷田部先生が文化祭でロミオとジュリエットやらせる。「ぶーぶー言わない!もう決めたんだから」
亜紀パパ、ママが堤防でカニクリームコロッケ。
サク父、母が写真館で働く姿。サク、明希、一樹が収まった入学式の写真。
緑の田んぼの中を走る自転車に三人乗りのサク、明希、一樹。
誰かを乗せて走る=一緒に生きること、最後に自転車でサクが登場したのは本当に嬉しかった。
でも本放送の時、もっともっともっと嬉しかったのは、もう見られないと思っていたあの二人が堤防で夕日の中笑って会えた時。こんな笑顔の、幸せそうな二人を見たのはすごく久しぶりだったから。涙の洪水の中、爽やかな穏やかな気持ちになれました。DVDで見る時も、9話あたりからはこの最終話の一番最後を見るまではどうしても途中でやめられない。そうしないと次の日が迎えられないです。見終わると、がんばって生きていこうと、なんだか空っぽになった胸の中に新たな力が湧いてくるんです。すごいことだと思う。こんなドラマはきっと、二度とないよ。
走り終えたその時、君と笑って会えるだろう